箱根駅伝選手のシューズに見る、革新的な道具がもたらす混乱

お正月の風物詩、箱根駅伝の関係で面白い記事がありました。

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ナイキの「ヴェイパーフライ」というオレンジのシューズが今陸上界を席巻しています。マラソンの世界トップランナーはこぞって履き、今年の箱根駅伝でも実に4割の選手がヴェイパーフライ4%を履いたそうです。

今をときめくマラソン日本記録保持者・大迫選手(ナイキオレゴン所属)も、当然ヴェイパーフライ。
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超厚底で、シューズ底のスポンジが跳ねるような走り方をサポートしてくれるんだとか。一般選手ではなかなか手に入らないらしく、プレミアがつくほど。

シューズの性能が記録に直結するのは健全なのか問題

「ずるい」という考えも一部ではあるようですが、まあそれはお門違いの批判でしょう。でもあまりにもシューズの性能が良くなりすぎると、競技の本質が変わってしまう可能性はあります。

思い起こされるのが2008年北京オリンピックの競泳での「レーザーレーサー問題」。Speedo(スピード)社のレーザーレーサーという特殊な素材を使った水着を着用した選手が異常な世界記録を連発してしまった出来事です。

あまりにも性能が良すぎ、しかも4年に1度のオリンピックと重なってしまったために競泳界は大混乱。当時日本メーカーと契約していた北島康介選手は、苦渋の決断でレーザー・レーサーを着用して北京オリンピックに挑みました。結果はご存知、2004アテネに続いて100mと200m平泳ぎのダブル金。

ちなみにこのレーザー・レーサーはその後、競泳を管轄する団体から使用が禁止されてしまいました。

ヴェイパーフライはさすがにレーザー・レーサーほどの異常な性能ではないかもしれませんが、今後改良されてあまりにもサポート力が高すぎるとなると、もしかしたら規制が入るような事があるかもしれません。

箱根駅伝でも好記録が出まくった

今年の箱根駅伝では10区間中5区間に新記録が出ました。距離が去年から変わった区間があるという事情を差し引いても、間違いなくナイキのヴェイパーフライの力によるところが大きいでしょう。

道具に依存するという点では卓球も似たようなものか

陸上、競泳とは方向性が違うかもしれませんが、卓球も道具が成績に直結するという点では似ています。いまだにくすぶる「グルー問題」などもその影響ですよね。さらに回転・スピードが出る道具をトップ選手は求めているのは当たり前。

まあグルーは禁止されているので横に置いておいて、卓球界のヴェイパーフライ的な存在といえばテナジー(バタフライ)でしょう。世界選手権や全日本選手権の使用率は凄まじいものがあります。

ヴェイパーフライを使っている一般ランナーは「ずるい」「遅いくせにもったいない」とかケチを付けられる事もあるんだとか。テナジーと全く同じだ。テナジーも使ってるだけで「ずるい」だの「せこい」だの「下手なのに使うな」とか言われる系ですよね。

そんなテナジーも発売から10年。いよいよテナジーの改良版ディグニクス(製品名は多分)が2019年1月7日に発表される予定です。今年の全日本のバタフライ契約選手はこぞってディグニクスを使用するのでしょうか?

ラケットの素材自由化など道具が卓球界に混乱をもたらす可能性は大いにある

今のラケットは木材がメインで、一部にカーボンなどの素材を使うことが許されています。これがもし完全に素材自由化になったら、競技を破壊するような特性のスーパーラケットが登場することだって可能性は0ではないです。

実はラケットの素材自由化はちょっと前に寸前のところでITTF(卓球を管轄する世界団体)で否決されました。ごくごくわずかの差だったんですよね。道具にかなり依存するところがある卓球というスポーツなので、あまり変な道具が開発されて競技特性を壊さないで欲しいなあ…と願うばかりです。

まあラケットはいい加減、木材から脱却すべきとは思いますけど。同じラケットなのに77gと99gみたいに全然重さが違って弾みも違うなんて、ちょっとありえないですよ(体験談)。

数十年後の中学生は「昔の人ってラケット木だったらしいぜ」「マジかよ!原始人かよ!」なんて帰り道に爆笑していることでしょう。

何卓佳(ヘ・ジュオジア) - 中国から新しい刺客がやってくる

また中国女子からヤバめの人が出てきました。

何 卓佳(ヘ ジュオジア/HE Zhuojia)、20歳。

ネットでは「へーちゃん」「なんちゃん」などと呼ぶ人が多いみたいで、人気急上昇中です。何卓佳で検索すると「何卓佳 かわいい」とサジェストされるぐらい笑

確かに刺さる人には刺さる感じの、独特の魅力があります。勝った後の嬉しさを押し殺した謙虚な感じも、日本人の心には刺さる。丁寧以降、いまいち中国女子のキャラが薄い時代が続いていたので、久々に日本でも人気が出そうな選手が出てきました。


伊藤美誠に勝った後のインタビュー。
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ちなみに自分の心にも刺さりまくっています。へーちゃんかわいいぞ!

1998年生まれで伊藤美誠や平野美宇の2つ上

1998年10月25日生まれで天津の出身。天津は北京のお隣のそれなりの大都市です。右利きのバック粒。

2014年ころはジュニアカテゴリーなどで世界大会に出ていましたが、そこから突如として音沙汰無し。2018年になってワールドツアーに復帰しました。リュウシブンを破るなど頭角を現し、2018年末のグランドファイナルに出場するまでに大出世。

グランドファイナルでは石川、丁寧を破り準優勝し、世界ランクを先月50位から27位に爆上げしてきた人です。1年前までは300位ぐらいだったことを考えると、中国も「これはいいぞ」ってことでプッシュ中なのでしょう。

バック粒の前陣速攻型

グランドファイナル3連戦を見てもらうと、プレースタイルがわかってもらえるかと。フォアは裏、バックは粒を張るいわゆる異質前陣速攻型で、最近は中国トップでこういう選手はほぼ絶滅しちゃいました。

日本女子にはわりと多い戦型ですが、だいたいバックは表を張ってるんですよね。ところがへーちゃんはバックが粒です。プレースタイルはどう見ても表を張っているようにしか見えません。がんがんバックで打ってくる。後で紹介しますが、伊藤美誠も「粒のくせに打ちまくってくるから辛い」みたいなこと言ってました。

グランドファイナル準々決勝で石川を破る
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準決勝では丁寧を逆転4-2で撃破
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決勝は陳夢(中国)に敗れる
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何卓佳は福原愛の元コピー選手

中国は日本などのトップ選手のコピー選手を作って対策することで知られています。何卓佳もその1人で、愛ちゃんのコピー選手だった時代がありました。確かに何卓佳の試合見てると愛ちゃんっぽいですよね。懐かしい感じ。

何卓佳のバックラバーは「フェイントソフト」らしい

フォアはともかくバックに何のラバー張ってるか気になりますよね。
何卓佳のバックラバーは、バタフライのフェイントソフトみたいです。

発売は1976年で、定価が2000円の格安ラバー。マジですか…。マークVやスレイバーと同時代に作られたラバーです。粒の入門的なラバーで、カットマンのバックに使われる事が多い。

そういえば愛ちゃんもほぼ粒っぽい表(アタックエイト)を貼っていた。

vs日本は1敗のみ?

中国はほんとに強いのしか国際試合に出さないので、何卓佳はようやく2018年になってからワールドツアーに出始めました。なので日本人とはまだあまり対戦がありません。

vs伊藤美誠は全勝

日本が誇る最強バック表、大魔王こと伊藤美誠とは、ジュニア時代を含めて3度対戦して、全勝。

フル
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ハイライト
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2018ワールドツアーオーストラリアオープン
伊藤2-4何卓佳

2014年 ジャパンオープン
伊藤1-4何卓佳

2012年世界カデットチャレンジ
伊藤2-4何卓佳

伊藤の何卓佳評があったので紹介します。

中国の包囲網から得た収穫 卓球・伊藤美誠に聞く:時事ドットコム

―何卓佳選手とは過去に対戦しています。福原愛選手(ANA)のダミーをしていたこともある選手ですね。


 「結構やりづらいところも福原さんに似ています。バック側が粒高(つぶだか)というカットマン用のラバーで、粒高は普通(打球を)止める使い方が多いんですが、打ってくる。粒高であんなに打てる。ミスをしないし、粘ってくる」


―今年は全日本選手権3冠、世界選手権団体戦での活躍、ジャパンオープン荻村杯優勝と好成績が続き、ピンチでも落ち着いている印象でしたが、今回は今までと違う攻め方をされたのですか。


 「中国人選手はボールの質やパワーで相手にミスをさせにくるんですが、あの選手は自分が絶対にミスをしないで振り回してくる。自分から仕掛けた時もミスをしないし、ブロックもうまい。打っても何本も返ってきて、思い通りにさせてくれないので、イライラしていました。いつも、ミスをしたら自分の中で変えていくんですが、変えても変えても入らない」

vs石川は2勝1敗

石川とは2018グランドファイナルの準々決勝でフルゲームのすえ勝利。2018オーストリアオープンではストレート勝ち。

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2014のジャパンオープンでもあたっていて、この時は敗れている模様。当時は16歳。しろのたつみさんの当時の評価が残っている。

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「何卓佳 かわいい」「へーちゃん かわいい」で検索してきた人用の画像

https://twitter.com/s2076wwf/status/1025376209083949057


何卓佳の試合を集めてみた


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髪型が2012ロンドンのときのリギョウカみたい。
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フルセットでリュウシブンを破る
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vs 中国若手筆頭
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まとめ:へーちゃん、かわいいぞ!

へーちゃんこと何卓佳。今後が楽しみでもあるし、脅威でもある女子選手が中国から出てきました。

丁寧、朱雨玲、陳夢などを押しのけて中国代表として世界卓球やオリンピックに出てくるようだと面白いですね。みんな裏裏の正統派ドライブマンばかりだと個性に乏しい。各チーム1人ぐらいは異質、カットマン、ペンが入るとバラエティ豊かで見てても飽きない。

まあ中国はオリンピックはガチで獲りにきますから、経験の浅いへーちゃんは多分世界ランクが3位ぐらいになっても2020東京はまず選ばれないでしょう。2016年のリオの時も、当時20歳ぐらいだったファンジェンドンを代表に選ばずに、馬龍、チャンジーカ、キョシンという安定3人組にしましたからね。

でも今年の世界卓球は個人戦なので、ぜひ出てきて欲しいところ。
へーちゃん、期待です!

日本代表の序列推移(2017年1月→2019年1月)

ちょうど1年ぐらい前に以下の記事を書いていました。今年の状況も踏まえて、2年間の序列推移を見なおしてみたいと思います。

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男子

2017年1月

水谷
丹羽


吉村兄
大島、松平健太
張本

2年前の2017年1月はこんな感じでした。半年前に行なわれたリオオリンピックの状況とほとんど変わってないですね。
水谷、丹羽のツートップにちょっと差があってリオメンバーの吉村真晴が続く。その次に大島、マツケン、そして張本が日本代表を伺うポジションに入ってきました。この時点で張本は中1。

2018年1月

水谷
張本
丹羽


大島、松平健太
森園、吉田雅己、上田、吉村兄弟

2018年1月では張本が大出世で水谷に次ぐレベルに。ちなみにこの時点ではまだ全日本は優勝していません。今のBIG3である水谷張本丹羽はすでに1年前にできていたことになります。

大島、マツケンが4番手5番手を争い、その下に森園らが続く陣容でした。

2019年1月

張本


水谷 丹羽


大島、上田、吉村真晴、吉村和弘
森園、吉田雅己

さらに1年が経過して、張本のエースの座は揺るぎないものとなりつつあります。全日本で水谷を下し、ジャパンオープンでは張ジーかを下して優勝。そしてグランドファイナルでは中国ベストメンバーが参加していたにも関わらず優勝。現最強ファンジェンドンを直接下したわけではありませんが、かなりの快挙でしょう。

Tリーグでも獅子奮迅の活躍でシングルスは勝ち頭を独走しています。まだまだ感情的にムラがあって、たまにプッツン気持ちが切れているのが心配ですが、もはや完全にエースの座を手中に収めた感じがします。水谷、丹羽に差をつけての序列トップになりましたね。

続くのが水谷・丹羽。水谷はちょっと取りこぼしが増えてきて心配です。

その下に大島らがずらーっと並ぶ感じで、長らく4~5番手をキープしていたマツケンがトップ10からもいなくなってしまった感じです。

女子

2017年1月

石川


伊藤
平野

佐藤 橋本 早田 加藤 浜本

2年前は石川がまさに女王。ダントツでした。それに続くのが伊藤平野の黄金世代。

2018年1月

平野 石川
伊藤


早田
加藤
佐藤 橋本

2017年に平野が大ブレークしたのをきっかけに、平野・石川が序列トップに、伊藤が続く感じの序列。

2019年1月

伊藤 石川


平野
芝田

加藤 早田


佐藤
橋本 長崎

伊藤が全日本3冠、世界卓球団体戦でリュウシブン撃破、スウェーデンOPで中国トップ3を撃破で優勝など好調の1年でした。世界ランクでは石川3位、伊藤が7位と差がありますが、この二人は甲乙がつけづらい。安定感があるのは石川だし、大物食いの可能性があるのは伊藤。ということで同列で序列トップに。

ちょっと苦戦が続く平野は3番手。そしてその後ろにひたひたと芝田沙季が迫ってきています。去年の今頃は完全にノーマークの存在でしたが、15位にまで上げてきました。平野との直接対決も2連勝中。

平野と芝田の世界ランクがひっくり返るかどうかが2019年の注目ポイントです。

加藤は「永遠の5番手」ポジションをキープしつつあります。突き抜けられるかどうか。そして怪我の影響もあり世界ランクを大幅に下げてしまった早田もポテンシャルでいえばもっと上を狙える選手です。2人にとっては勝負の年ですが、相当なブレークが無い限りはトップ3に追いつくのは難しいでしょう。

カットマンの佐藤と橋本は…評価が難しんですよねえ。中堅選手はカット打ちを苦手とする人が多いのでわりと堅実にポイントは積み重ねられるみたいですが、トップ選手には全く勝てないっていうのがプラボール時代のカットマンのポジションです。だからわりと世界ランクは上の方まで来るんだけど、そこからの突き抜けがまず無い感じ。

世界ランクだけでいえば佐藤は日本4番手ですが、ここから多分上がるのが難しい。ということで序列としてはちょっと下になっちゃいます。

まとめ

こうやって2年間の序列推移を見ると、張本以外はそこまで劇的な変化はないですね。女子は石川が相変わらず世界ランク日本女子トップをキープしていますし、水谷も徐々に衰えを感じなくもないですがまだまだ一線級です。

ただ卓球って落ちるときはガクッと落ちる。石川は年齢的に大丈夫でしょうが、水谷は今年の6月で30歳。急激に成績が低下するようなことは無くはないです。

水谷に変わるニュースターを見たい気もするし、東京オリンピックまでは水谷が引っぱって欲しい気もします。

さあ来年2020年1月に、この序列記事を書く頃にはオリンピックの選考レースも終わっています。この1年間は日本卓球界にとって重要な1年になるでしょう。めざせ東京オリンピック金メダル!

東京オリンピック選考レースを予想[男子編](2019年1月現在)

男子

◎ 張本
○ 水谷
○ 丹羽

△ 吉村和弘
△ 大島

穴 吉村真晴
大穴 上田
浪漫枠 宇田君、平野



よほどのことが無い限り張本、水谷、丹羽のBIG3で決まりなのが男子。

張本は確定

特に張本はもう確定でしょう。2019年1月のランキングでは自己最高の3位。今年の世界卓球でメダルでも取ろうものなら、1位はファンジェンドンがいるので無理としても、世界ランク2位でオリンピックを迎えることは十分可能な位置につけてきました。

2番手グループに水谷、丹羽

全盛期は確実に過ぎつつある水谷ですが、まだまだ粘りそう。東京まで1年半、どれだけ実力を維持できるか。Tリーグでも平野に敗れるなど、以前では考えられなかったような取りこぼしが目立ってきたのが不安材料です。

前々記事でも紹介したように、水谷は2018年の世界卓球団体戦のポイントが2000加算されるという有利なポジション。シングルス2枠が取れるかどうかは微妙ですが、団体3枠には入ってくるでしょう。

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丹羽も淡々とポイントを稼いで上位をキープしています。2017年の世界卓球ドイツ個人戦の2100ポイントが失効するので、今年の個人戦でどれだけ稼げるかですね。2017年は地元オフチャロフを破るなど快進撃がありました。今回はどうなるか。

第3集団には吉村和弘と大島をあげたい

BIG3の水谷、丹羽を脅かす可能性がある第3集団に、張本を除けば伸び率No.1っぽい吉村和弘と大島をあげます。

特に吉村和弘への期待度は個人的に高いです。2018年はワールドツアー優勝に加えてTリーグでも印象深い勝利をあげました。本格派の両ハンドでスケールが大きい。ドカンと突き抜ける可能性がある選手だと感じています。

「永遠の日本5番手」みたいなポジションになりつつある大島。この選手も派手なラリーで好きな選手なのですが、世界ランクは30位前後から突き抜けることができません。

リオオリンピックでは当時3番手のマツケンを同級生の吉村真晴と共に猛追し、残念ながら吉村には代表の座を譲ったという苦い過去があります。わずかの差でかたや銀メダリスト、かたやリザーブ。その悔しさを2019年に晴らせるか注目です。

穴、大穴

リオ後にバタフライイチオシ選手としてプッシュされたのも過去の話。急に日本代表から姿を消した吉村真晴でしたが、堅実にワールドツアーでポイントを稼ぎ、現在4番手にまで上げてきました。2015〜2016年頃に一斉を風靡したアップダウンサーブが他の選手には対策されて強味を失い、「もう終わった」みたいな言われ方をしていたことを考えると急激な復調っぷりです。個人的にも吉村真晴がここまで戻してくるとは思いませんでした。

弟の和弘が2019年は大ブレークする可能性がある中で、兄ちゃんとして銀メダリストとして負けるわけにはいかないでしょう。兄弟でオリンピック枠を争うようなことになれば、見ている側は大盛り上がりです。

大穴として上田仁。協和発酵キリンをやめてプロに転向し、岡山リベッツのエースとしてダブルスにシングルスに大活躍の1年でした。世界ランクは30位台なので3番手に食い込む可能性が十分にありますが、どうなのか。

浪漫枠

まあ無理だろうけど、この選手が入ったらいいなあ〜という浪漫枠(ろまんわく)には2人。宇田君と平野友樹。

宇田幸矢は高校1年生(2019年度に2年生)のエリートアカデミーの選手。張本の1つ上。前陣でライジング気味に打つバックハンドがえぐい選手だったけど、段々と身体も大きくなってきた後ろからも打つようになってきた。将来は日本代表に食い込む人だとは思うけれど東京に間に合うかどうか。

偉大なメダリストの姉を持つ平野友樹も2019年に注目したい選手の1人。年齢的に大きな上積みは無いかもしれないけれど、2018年下半期の活躍っぷりは特筆に値するものがあります。

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まとめ:張本以外はまだわからない

張本が完全に抜きん出た状態で始まった2019年のオリンピック選考レース。張本はもうシングルス2枠入りが確定でしょう。

残りの2枠をめぐって日本男子卓球界の仁義なき選考レースが始まります。どの選手も怪我なく全力を尽くしてくれることを期待しましょう!

マツケンこと松平健太はどうしてしまったのか?不調にあえぐマツケンの現在地

卓球っぽくないその風貌からホリプロに所属する異色の選手、それがマツケンこと松平健太。

青森山田から早稲田大学に進み、在学中の2013年の世界卓球では五輪金メダルの馬琳、元世界ランク1位サムソノフを破りベスト8。綺麗なカウンターと居抜きバックハンドが印象的な選手だった。

その松平健太が2018年の後半から不調にあえいでいる。

世界ランクは1年間で急降下!10位から60位に

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2019年1月発表の世界ランクは60位にまで低下。ちょうど1年前に10位だったことを考えると急降下だ。しかも今年の世界卓球には出場できないことがほぼ確定なので、2017年に獲得した900ポイントも失効してしまいさらにランクは下がりそう。

Tリーグでは開幕当初こそ丹羽、横山に勝利したが、その後は平野、丹羽、吉村に敗れている。まあダブルスメインっぽい起用になっているとはいえ、ちょっと心配。

世界選手権代表1次選考会でも20人中16位。水谷、張本、丹羽、大島が出ていない1次選考で16位というのは、いったいどうしたんだろうと。小学5年の松島そらくんに負けなかったのが救い。

まだ27歳、老けこむ年齢じゃない

マツケンはまだ27歳。これからいくらでも挽回できる年齢だと思うのだけど、リオでは吉村・大島の台頭の前に代表落ち、そして東京前に謎の不調。ことごとくオリンピックに縁が無い。

2013年の頃のあの輝きはもう戻ってこないのだろうか。2歳上の兄ちゃんが最近好調なので余計にマツケンが心配だ。

東京オリンピックの選考基準を確認

いよいよ東京オリンピックの前年、2019年がスタート。この1年の戦い次第で、どんな選手にも東京オリンピックの代表を勝ち取るチャンスがあります。

2018年以前の結果はノーカウント!2019年の国際試合の結果のみで代表が決まる

2020年1月に発表される世界ランクの上位2人が、シングルス及び団体戦に出場します。残りの1人はもう少し後に3番手の選手が推薦される模様。

現在の世界ランクは、直近1年間の国際大会のうちもっとも成績の良かった8大会のポイントのみを採用するシステムなので、2019年より前、つまり2018年12月31日までの成績はほとんど関係ありません。
※例外として2018年の世界卓球団体戦のみ成績に入る。これは後で解説。

つまり2019年1月現在、世界ランクが100位の選手でも、オリンピック代表を勝ち取るチャンスは十分に可能性はあるってことなんですよ。これは面白い。

ポイント加算は国際試合のみ

国内の全日本卓球やTリーグの試合は全く世界ランクに関係ありません。

  • 世界卓球
  • ワールドカップ
  • アジアカップなど地域別の大会
  • ワールドツアー

このような国際試合のみがポイント加算の対象です。格の高い大会ほどポイントが高くなっています。

世界卓球のみは2年間有効

世界卓球は団体戦と個人戦が交互に開催されるために、特例として2年間(次の大会まで)有効となります。例えば2018年4月の世界卓球団体戦のポイントは、次の2020年の団体戦まで有効となります。そのため2020年1月発表の世界ランク時点では有効となっちゃうわけです。

この2018年4月の世界卓球の団体戦のポイントが、もしかしたら代表選出に大きく影響してくる可能性があります。次で詳しく解説します。

2018年4月の世界卓球団体戦の日本選手のポイント

スウェーデンのハムルスタッドで開催された世界卓球団体戦で、日本男子は準々決勝で敗退、女子は準優勝でした。この時のポイントは代表選考レースに影響があるので、それぞれの選手を確認しておきましょう。

世界卓球団体戦は、試合に出場して1勝するごとに250ポイントが加算される模様。つまりたくさん試合に出て勝っている選手はポイントが増えるし、試合に負けたり出ていない選手はポイントが少なくなる仕組みです。

女子

伊藤…2000
石川…1750
平野…1500
早田…250
長崎…0

チーム勝ち頭の伊藤が2000ポイント。激しく国内2位争いをしている平野の1500ポイントに対して500ポイントの差をすでにつけてしまっています。

これが代表2枠にどう影響するか。ちなみに2019年1月の最新ポイントで伊藤は平野に対して800ポイント差をつけてリードしています。

男子

水谷…1500
張本…1250
丹羽…750
マツケン…500
大島…250

ここもBIG3である水谷、張本、丹羽がポイントを稼いでいます。

2019年のグランドファイナルで全てが決まる

2019年を締めくくる大会といえばグランドファイナル。去年は張本が優勝しました。この大会をもって2019年の卓球の国際大会は全て終了し、翌2020年の世界ランクが決まります。

今年のグランドファイナルは非常に熱い戦いになりそうです。グランドファイナルに出る資格を持っていない選手は、ほぼ2020年への道は断たれていることでしょう。

まとめ:下克上は起こりにくい

原則として2019年の試合結果のみで世界ランクが決まるとはいえ、2018世界卓球団体戦のポイントのみは初期で加算されるというわけです。女子は芝田、早田、加藤、佐藤などが虎視眈々と代表を狙っていますが、BIG3にはすでに1500ポイント以上の差がついてしまっているのは辛いところ。丹羽が750点に留まっている男子の方が、下克上の可能性は残っていそうです。

どの選手にもチャンスがあるとはいえ、2018年4月の世界卓球団体戦でポイントを稼いだ選手が有利になっている感じは否めません。下克上は簡単には起こりそうにないです。

シングルス2枠の可能性があるのは男女ともにBIG3に限られているのではないでしょうか。

男子→水谷、張本、丹羽
女子→石川、伊藤、平野

もしこれ以外の選手が代表入りするとしたら、3番手に滑りこむしかなさそうです。

「コントロールラバー」が入門者におすすめできない理由

卓球のラバーに詳しくない人に説明する時に、大雑把に3種類に分けるパターンがよく見られます。

・コントロールラバー
・高弾性ラバー
・テンションラバー

上から下にいくにつれて弾みや回転が増してきます。つまりコントロールラバーは1番弾まないラバー。

だから入門者におすすめ…という説明文を見たら、ちょっとそのサイトやブログは疑ってかかった方がいいかもしれません。5年前ならともかく、プラスチックボールに変わった2019年現在はもうコントロールラバーを使うべきではないです。

この記事ではコントロールラバーを入門者が使わないほうがいい理由を3つ紹介します

コントロールラバーを使わないほうがいい3つの理由

弾まなさすぎると上達の妨げになる

初心者のラバーが弾み過ぎると、たしかに台からオーバーしてしまうので上達の妨げにはなります。かといって、弾まなさ過ぎるのもダメです。

初心者が使うラケット(木の部分)自体も弾まないものが多いため、ラバーまで異常に弾まないものを使ってしまうと、とにかく飛びません。

飛ばないラケット・ラバーを初心者が使うとどうなるか。いつまでもラケットの面が立ったまま、もっと言えば上を向いたままになります。

下手くそな絵ですみませんが、ボールはこのような角度で打たなければいけません。現代的なラバーであれば、ラケットをある程度伏せてもボールが落ちずに、しっかりと上&前に飛んでくれます。
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しかしコントロールラバーはボールが上に上がりにくく、落ちやすいです。そのため初心者がコントロールラバーを使うとラケットの角度がこうなります。ラケットが垂直に立ち過ぎちゃうんです。

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極端な人だとこうなる。ラケットの打球面を上にして、ボールを持ち上げるように打ってしまう。さすがに中学生ぐらいだとやりませんが、小学生低学年や中高年の大人はやりがちです。

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適度にボールが弾んだほうが正しいラケットの角度を覚えやすいです。だからコントロールラバーはおすすめできません。

ボールに回転がかからない

コントロールラバーはボールに回転がかかりにくいために、お互い打ちづらいです。卓球のラバーは回転をかけようと意識しなくても、普通に打っているだけである程度の「上回転」がかかります。ラバーのグリップや反発力で自然と回転がかかるんです。

適度な上回転がかかっていると、相手も打ちやすい。自然とラリーが続きます。

コントロールラバーは回転がかかりにくいために、ナックル(無回転)っぽいボールで飛んでいきます。そうすると相手が打ちづらくて、ボールをポトッと落としてしまいます。初心者同士で練習していると絶望的にラリーが続かず、上達の妨げになるでしょう。

2015年からボール素材が変わって飛ばなくなった

2015年頃から卓球で使われるボールの素材がセルロイド→プラスチックに変わりました。この新しいプラスチックボールは以前のボールよりも重くなったために、飛びません。

ただでさえ飛ばないコントロールラバーが、ボール素材の変化によりさらに飛ばなくなっているんです。もう使うべきじゃないです。

コントロールラバーってどういうものがあるの?

以上の理由からコントロールラバーは入門初心者レベルとはいえ、使うべきではありません。ところでコントロールラバーってどういうものがあるんでしょうか?

フレクストラ(バタフライ)
ヤサカオリジナル(ヤサカ)
オリジナルエキストラ(ヤサカ)

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この3つが特に有名です。

ヤサカオリジナルは1950年ころに作られた、もっとも古い裏ラバー。そういうものをいまだに使うってのは、ちょっとありえないと私は思いますね。すぐに白い粉を吹いて劣化して引っかかりがさらに悪くなりますし。

せめて高弾性ラバー「マークV」を使おう

コントロールラバーは安いから、中学1年生やそこまで本気で卓球をやろうと思っていない大人の入門者には、それなりに売れています。でも卓球は一生涯できるスポーツです。たったの数百円の差でコントロールラバーを使い、上達の妨げになったり打つ爽快感を損なってしまうのはもったいない。

コントロールラバーよりも「高弾性ラバー」と呼ばれるラバーの方がまだオススメできます。

高弾性ラバーの代表格といえばマークV(ヤサカ)。

定価3200円なので税込み&2割り引きで実売2764円です。定価2200円のヤサカオリジナルの実売価格は1900円。800円ほどの差ですか。両面だと1600円の差。

ヤサカ(Yasaka) 卓球ラバー マークV アカ 中厚 1.8mm CA B-10 20
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マークVは1967年に開発されたそれなりに古いラバーです。ただし10年ほど前までは世界トップレベルの選手がバリバリに使っていラバーでもあります。その頃はスピードグルーというラバーの弾みを上げることができる溶剤が認められていたために、マークVに塗られていました。

現在のマークVの立ち位置は完全に「初心者向け」です。プラスチックボールになってからはマークVの弾みですらも初心者には足りないという人もいますが、私はそうは思いません。

しっかりとした指導者が付きっきりで教えてくれる環境ならもっと弾むラバーでもいいでしょうが、普通の中学生や大人から始める人には高弾性のマークVで十分だと思いますね。

ただし最低限フォア面は中厚(1.8mm)にしましょう。フォアに中(1.5mm)は薄くておすすめできません。バックなら1.5mmでも最初の1枚目としてはOKです。バックはまずツッツキでしっかり切ることが大事なので、1.5mmぐらいの薄さで切る感覚を覚えるのは将来に役に立つでしょう。

2019年現在は入門者向けの高性能ラバーがたくさんある

以上、コントロールラバーは入門者でも使わないほうがいい理由について解説してきました。もうフレクストラとかヤサカオリジナルを使うのはやめましょう。

この記事で紹介したマークVの他にも、2019年現在は各社から入門者向けの現代的ラバーがたくさんでています。

ヴェガイントロ(XIOM)…3200円
ヴェンタスベーシック(TSP)…3000円
GTT45(andro)…3200円

これらはマークVよりも弾みます。中学生だったら上記の現代的入門ラバーでもいいでしょう。ただし中高年になってから卓球を始める人はマークVをおすすめします。

とにかくフレクストラやヤサカオリジナルやオリジナルエキストラはもう使わない!ってことだけは覚えておいてください。