全日本最終日[全日本2019]

2019年(2018年度)の全日本卓球が終わった。

平成最後の全日本を水谷が獲ったのは感慨深い。後世の人は「平成の卓球王」のような異名をつけるんじゃないだろうか。

V10を達成し、どんな試合も駆けつけてくれた主婦ファンのために観客席に飛び込み、優勝ボールを渡し、脱いだユニフォームまで投げ入れた。全部最後に持っていた。水谷すげえよ。あんたすごいよ。



それにしても最終日の男子は面白かった。心に来るものがあった。平たく言えば感動した。なぜならベスト4のうち3人が、本気で優勝したいと思っていたからだろうなと。その3人はもちろん水谷、張本、大島だ。

準決勝の大島vs張本戦は今大会のベストゲームだろう。単にスコアが競ったというだけでなく、2人の気迫が凄かった。張本は負けられない、大島は勝ちたい、そういう微妙な方向性の違いがあるにせよ、鬼気迫る顔だった。だから現地の観客も引き込まれたし、自然発生的に最終ゲーム9-9などで拍手が起こった。

一方女子の試合は全てが淡白だった。男子のしびれるような試合とは真逆で、観客も冷えていたように感じる。スコアがいまいち競らないという以上に、ベスト4のうち優勝したいと本気で思ってるのが伊藤美誠だけだったからじゃないか。

早田も、森も、そして木原もベスト4で満足していた。もちろん負けて悔しいとかそういう気持ちはあるんだろうけど、劣勢に立たされても何とかしてやろう、何とかしなきゃっていう、瀬戸際で食い下がるような気迫はこれっぽちも感じなかった。だから会場も冷えた。

誰が見ても大勢が決した男子決勝の6ゲーム目、大島は最後まで諦めてなかった。5-11で終わった瞬間、まるでデュースで負けたかのような落胆っぷりだった。5点差がついてチャンピオンシップポイントを取られても、まだ金メダルを諦めていなかった。そんな選手が準決勝、決勝を戦ったからこそ、関西の観客も胸に来るものがあったんだと思う。



今回、妙に全日本後に感傷的になっている卓球ファンが多いように感じる。

水谷の全日本引退、日本代表からの引退時期の明言があったので感傷的になっているところもあるだろう。でもそれと同じぐらい、敗者の大島・張本の負け方に胸を打たれたんじゃないかと。

ベスト4のうち、本気で優勝を願い、最後の1ポイントまで必死で闘う選手が3人もいた全日本は近年あまり例が無いのではないか。「水谷相手に負けたら仕方ないよな」「俺がベスト4か、出世したな」ぐらいの気持ちの選手だらけだったように感じる。

今年の男子は素晴らしかった。ありがとう大島、張本。ありがとう水谷。



新しい年号を引っさげて、来年から水谷のいない全日本が始まる。