箱根駅伝選手のシューズに見る、革新的な道具がもたらす混乱

お正月の風物詩、箱根駅伝の関係で面白い記事がありました。

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ナイキの「ヴェイパーフライ」というオレンジのシューズが今陸上界を席巻しています。マラソンの世界トップランナーはこぞって履き、今年の箱根駅伝でも実に4割の選手がヴェイパーフライ4%を履いたそうです。

今をときめくマラソン日本記録保持者・大迫選手(ナイキオレゴン所属)も、当然ヴェイパーフライ。
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超厚底で、シューズ底のスポンジが跳ねるような走り方をサポートしてくれるんだとか。一般選手ではなかなか手に入らないらしく、プレミアがつくほど。

シューズの性能が記録に直結するのは健全なのか問題

「ずるい」という考えも一部ではあるようですが、まあそれはお門違いの批判でしょう。でもあまりにもシューズの性能が良くなりすぎると、競技の本質が変わってしまう可能性はあります。

思い起こされるのが2008年北京オリンピックの競泳での「レーザーレーサー問題」。Speedo(スピード)社のレーザーレーサーという特殊な素材を使った水着を着用した選手が異常な世界記録を連発してしまった出来事です。

あまりにも性能が良すぎ、しかも4年に1度のオリンピックと重なってしまったために競泳界は大混乱。当時日本メーカーと契約していた北島康介選手は、苦渋の決断でレーザー・レーサーを着用して北京オリンピックに挑みました。結果はご存知、2004アテネに続いて100mと200m平泳ぎのダブル金。

ちなみにこのレーザー・レーサーはその後、競泳を管轄する団体から使用が禁止されてしまいました。

ヴェイパーフライはさすがにレーザー・レーサーほどの異常な性能ではないかもしれませんが、今後改良されてあまりにもサポート力が高すぎるとなると、もしかしたら規制が入るような事があるかもしれません。

箱根駅伝でも好記録が出まくった

今年の箱根駅伝では10区間中5区間に新記録が出ました。距離が去年から変わった区間があるという事情を差し引いても、間違いなくナイキのヴェイパーフライの力によるところが大きいでしょう。

道具に依存するという点では卓球も似たようなものか

陸上、競泳とは方向性が違うかもしれませんが、卓球も道具が成績に直結するという点では似ています。いまだにくすぶる「グルー問題」などもその影響ですよね。さらに回転・スピードが出る道具をトップ選手は求めているのは当たり前。

まあグルーは禁止されているので横に置いておいて、卓球界のヴェイパーフライ的な存在といえばテナジー(バタフライ)でしょう。世界選手権や全日本選手権の使用率は凄まじいものがあります。

ヴェイパーフライを使っている一般ランナーは「ずるい」「遅いくせにもったいない」とかケチを付けられる事もあるんだとか。テナジーと全く同じだ。テナジーも使ってるだけで「ずるい」だの「せこい」だの「下手なのに使うな」とか言われる系ですよね。

そんなテナジーも発売から10年。いよいよテナジーの改良版ディグニクス(製品名は多分)が2019年1月7日に発表される予定です。今年の全日本のバタフライ契約選手はこぞってディグニクスを使用するのでしょうか?

ラケットの素材自由化など道具が卓球界に混乱をもたらす可能性は大いにある

今のラケットは木材がメインで、一部にカーボンなどの素材を使うことが許されています。これがもし完全に素材自由化になったら、競技を破壊するような特性のスーパーラケットが登場することだって可能性は0ではないです。

実はラケットの素材自由化はちょっと前に寸前のところでITTF(卓球を管轄する世界団体)で否決されました。ごくごくわずかの差だったんですよね。道具にかなり依存するところがある卓球というスポーツなので、あまり変な道具が開発されて競技特性を壊さないで欲しいなあ…と願うばかりです。

まあラケットはいい加減、木材から脱却すべきとは思いますけど。同じラケットなのに77gと99gみたいに全然重さが違って弾みも違うなんて、ちょっとありえないですよ(体験談)。

数十年後の中学生は「昔の人ってラケット木だったらしいぜ」「マジかよ!原始人かよ!」なんて帰り道に爆笑していることでしょう。